今回はざっくり阪神電車における駅放送の歴史と変遷について振り返っていきたいと思います。
旧放送を収録したことはありませんがそちらについても判明している範囲でご紹介します。
消滅した旧放送の形式について
まずは、2009年以前の中川/横山ペアによる放送です。
今の運行管理システムが完成したのは1990年頃でその頃から本格的に駅自動放送が開始されたということになります。
この当時は男声と女声で発車メロディーも異なっており今でもそちらを惜しむ声は多数聞きます。
この当時は各設定ごとで案内の形式が一致していなかったらしく、特に元町駅がその大きな例でしょう。
現在の発車放送は全設定において「○番線の電車が発車します。」という内容ですが、2003年時点では普通のみ、「○番線から 各駅停車 ○○行きが 発車します。」という案内でした。
ただ、当時の資料があまり残っておらず、この形式は梅田行きと高速神戸行きでしか確認されなかったのですが、石屋川行きや尼崎行きでもこれだったのか明確なところは不明です。
また、当時設定があった大石行きについては「まもなく 1番線に 大石行きが 参ります 大石まで 各駅に停車します。」だったり、まだ西元町・大開停車だった直通特急(黄)については、「三宮から高速長田まで 各駅に停車します。 高速長田からの停車駅は 板宿…」みたいに今とはやや異なっていた内容が数多くありました。
また、各放送の最後に「本日も阪神電車をご利用いただきましてありがとうございます。」や「当駅は禁煙駅です。お煙草はおやめください。」といったものも当時の放送の文章の一つに組み込まれていました。
今で言う「ご乗車の際には 足元にご注意ください」みたいな形ですね。そちらに関しては当時はまだ御影駅にしか導入されていませんでした。
文面が概ね統一し始めたのは2006年のダイヤ改正辺りで普通での発車放送の変更もなくなりました。
ただ、接近時においては普通のみ先に種別から案内する形式が今も受け継がれています。
あと、遅延時限定で聴ける走行位置案内放送(「只今、次の電車は○○を出発しました。」)についてもこの時点で導入されていることを確認しています。
阪神なんば線開業直前
阪神電車の運行管理システムに大きな転機が訪れた時期です。
現在のLED式発車標が導入されたのは2008年9月で尼崎駅改良工事に伴い設置されたのが始まりです。
翌月には魚崎駅に導入されています。
駅放送については2009年1月22日より福島駅に導入されたのを皮切りに元町駅、尼崎駅など順次本線に先行使用される形となりました。
メロディー制作はお馴染み向谷実氏です。
阪神なんば線が開業するまではまだ予告放送や乗車位置案内は存在せずあくまで案内の内容自体は旧放送に則っています。
この約2ヶ月間のかなり短いタイミングではありますが、実は「出屋敷」や「杭瀬」「岩屋」と言った今では普通しか停まらない駅や山陽特急というレア種別の放送が聴けるほか、そして今では始発と終電の元町でしか聞けない女声「当駅折り返し」が西大阪線折り返しで日中聴き放題というかなり貴重すぎる期間でもありました。
阪神なんば線開業(2009年)〜神戸三宮駅改名
阪神なんば線 ドーム前駅 Dome-mae station on the Hanshin Namba Line
そして2009年3月20日、阪神なんば線が開業し予告放送と乗車位置案内が導入されるなど現在の放送の基本形が無事に整いました。
しかしこの時点ではまだ放送の最後にある「ご案内」はほんの少しに留まっており普通の先着案内などはこの当時ではまだありませんでした。その多くは2016年からの追加となります。
この時点ではあって現時点では存在しない案内は主に「神戸方面」や「明石・姫路方面、湊川・有馬方面へ〜」がありますが前者は神戸三宮駅改名により重複してしまうため、「高速神戸方面」や「新開地方面」に差し替えられてしまいました。
改名直後は途中追加のためパーツのつぎはぎが目立ちましたが、2016年改正直前に専用のパーツが用意されました。
後者は2016年改正で「神戸電鉄方面へ〜」に差し替えられました。
2016年ダイヤ改正/神戸高速線内に阪神駅放送導入
2016年のダイヤ改正で駅放送に大きな変化がありました。
一つ目は本線内で詳細放送が使用されている駅全ての放送が「白線の内側へお下がりください」から「黄色い線の内側へお下がりください」に差し替えられました。
二つ目は一部の案内の更新が行われ、先述の案内のほか、普通の先着案内、最終電車の案内が追加されました。
そして三つ目は神戸高速線西元町から高速長田間において阪神電車の放送が導入され、阪急線内の案内も行われるようになりました。
これにより山陽電車の行き先で今まで聴く機会がかなり少なかった放送が聞けるようになったほか、嵐山行きなどかなり貴重な放送も収録できるようになりました。
2017年 正式名称による駅名案内へ
2017年3月に行き先、停車駅案内等において今まで「姫路」「奈良」「難波」といった駅名案内から「山陽姫路」「近鉄奈良」「大阪難波」といった正式名称に切り替わりました。
「姫路」→「山陽姫路」
「奈良」→「近鉄奈良」
「難波」→「大阪難波」
「須磨」→「山陽須磨」
「垂水」→「山陽垂水」
「明石」→「山陽明石」
「上本町」→「大阪上本町」 など……
ちなみに西九条駅で「ご乗車の際には 電車のホームの間が空いておりますので 足元にご注意ください」が導入されたのはこの時期でここから高速長田、桜川と順に追加されていくことになります。
2018年 阪神アプリ導入
2018年に阪神アプリが導入され、各駅での案内がすぐ分かるようになりました。
放送の形式には特に大きな変化はないですが放送収録をする身としてはかなり革新的でした。
2019年 接近メロディー追加/全駅詳細化
放送詳細化!新たな通過メロディーも導入!大物駅ミニ自動放送集 【阪神電車】
2019年2月、突如詳細型を採用している全駅で「ご乗車の際には足元にご注意ください」が追加されその数日後に武庫川線で阪神電車初の接近メロディーが追加されました。
武庫川線や非詳細型では長らく「白線の内側へお下がりください」でしたがそちらもこのタイミングで「黄色い線の内側へお下がりください」に変更されました。
阪神本線及び阪神なんば線では最初に大物駅、杭瀬駅にて導入され通過メロディーの追加のほか、案内板にて次電車の情報と走行位置が表示されるようにアップグレードされました。
また、新開地駅ではメロディーの追加と共に予告放送や乗車位置案内が実装されました。
最終的には香櫨園駅、春日野道駅を除いた全ての駅で詳細化およびメロディーの追加が完了しましたが、前者は放送設備が、後者は案内板の設備が古かったため完全導入に時間がかかりましたがそちらもプレスリリース通り年内に無事更新されています。
ちなみに、「梅田」→「大阪梅田」「鳴尾」→「鳴尾・武庫川女子大前」に改名され、それに伴い停車駅案内の間が「・」から「、」に差し代わっています。
2020年ダイヤ改正/英語放送追加
2020年ダイヤ改正では青木発の区間急行、御影で区間特急接続、大阪難波行き快速急行の増発などで再び案内の追加がなされましたが、阪神アプリおよび発車標の案内文面の多くが「神戸電鉄方面へお越しの方は新開地でお乗り換えください」から「神戸電鉄方面へは新開地で乗換」という形に修正されました。
ただし放送自体は一部を除いてほとんど変わっていません。
そんな中、2020年5月頃、大阪梅田駅、尼崎駅、甲子園駅、神戸三宮駅、九条駅、西九条駅にてReadspeakerによる英語放送が追加され、発車メロディーの間隔も修正されました。
しかし英語放送の内容は「ご案内」準拠の案内を流すだけ(しかも全てではない)で肝心の電車の種別行先等は案内されません。今後再び追加されるかどうか注目です。
そして未来へ…
2021年、高速神戸駅にて新しい発車標の基盤と思われるものが設置され、おそらく3月、早くて2月頃に新開地駅同様発車標が一新され予告放送と乗車位置案内が実装されると考えられます。
1月に早速、山陽線内で車内放送も導入されたということでやはり神戸高速線内においてもReadspeakerによる駅英語放送も追加される可能性もあり今後の動向についても要チェックです。